シンクの前で、立っているだけで息が上がる朝
朝、キッチンに向かった瞬間、腰が重い。
洗い物をしようとして、シンクの前で立ち止まったまま、しばらく動けない。妊娠後期なのか、生後2週間なのか——どちらの段階でも、体は思い通りに動いてくれないんですよね。
それなのに、洗濯は溜まる。ゴミは出さないといけない。パートナーは仕事に出ている。周りに頼れる親もいない、という家庭も珍しくない。
「家事代行なんて贅沢でしょ」と思う前に、僕は一度立ち止まってほしいんです。産前産後って、普通に生活するだけでフルタイムの仕事をしているようなものなんですよ。
限界を「我慢の強さ」で測らなくていい
妊娠中や産後に限界を感じているあなただけじゃない。
SNSでは「産後1週間で家事も育児も全部こなしてる」みたいな投稿も流れてきます。でも、それは全部が全部、リアルとは限らない。見えないところでヘルパーが入っていたり、実家が近くにいたり、というケースも少なくないんですよね。
僕が大事だと思っているのは、「我慢できたかどうか」じゃなくて、「この状態のまま続けたら、自分が先に倒れないか」という視点です。
産前産後の家事負担を一人で抱え込むのは、根性の問題じゃない。周囲に頼れる人がいない、という構造の問題に近いんじゃないかなと思っています。
「助けを借りる=弱い」は、本末転倒じゃないですか
ここでよく聞く反論があります。
「家事代行なんて、お金持ちの人のサービスでしょ」「自治体の制度なんて、うちの市区町村にはないでしょ」
確かに、民間の家事代行はスポット2時間で4,500〜6,000円程度が相場で、産前産後の家庭にとってはハードルが高い。それは否定しません。
ただ、「制度がないから諦める」の前に、本当にないのかを確認してほしいんです。多くの市区町村で、産前産後ヘルパーや家事支援ヘルパーという名称の支援事業が動いています。名称も金額も、自治体ごとにバラバラなんですよね。
1時間300〜1,000円台のヘルパーが、実は近くにある
具体的に言えば、こういう制度があります(※すべて地域により異なります。最新情報はお住まいの市区町村の公式サイトで確認を)。
産前産後ヘルパーは、妊娠中〜産後一定期間の家庭に、家事や育児のヘルパーを派遣する事業です。利用者負担は1時間あたり300円〜1,500円程度の自治体が多く、上限時間内で何度か利用できるケースが一般的です。
例えば、東京都内の一部では1時間1,000〜1,100円程度。大阪府内の市区町村では1時間500円、場合によっては無料に近い設定のところもあります。兵庫県たつの市のように、利用費用の4分の3を助成する形式の自治体もあります。
「実質0円も」というのは、すべての家庭に当てはまるわけじゃない。でも、知らないだけで損している可能性は、十分にあるんですよね。
出産前に動けるうちに、窓口を当たっておく
制度を使うときのコツは、産後になってから慌てないことです。
多くの自治体で、利用前の申請や登録が必要です。対象は「周囲から支援を受けられない妊産婦」「悪阻や切迫流早産などで家事・育児が困難な方」といった条件が付くことが多い。家庭状況を伺う面談があるケースもあります。
検索の仕方はシンプルで、「お住まいの市区町村名 + 産前産後 ヘルパー」「家事支援 助成」で公式ページを探す。保健センターやこども家庭センターに電話で聞くだけでも、案内してもらえることが多いです。
2023年から始まった「出産・子育て応援交付金」のような国の枠組みもあり、自治体ごとにポイント付与や現金給付、家事支援サービスの利用料助成など内容が異なります。こちらも市区町村の子育て支援ページが入口になります。
人気の制度は枠が埋まりやすい、という話も聞きます。出産前のうちに「使えるかもしれない」と把握しておくだけで、産後の選択肢が一つ増えるんですよね。
民間の家事代行は、制度の「隙間」を埋める選択肢
自治体のヘルパー制度は、助成がある分、対象や回数に上限があります。全部の家事を丸ごと外注できるわけではない。
そういうとき、民間の家事代行サービスを併用する家庭もあります。Casy(カジー)のようなマッチング型サービスなら、1時間2,000円台から試せるので、「制度の上限を使い切ったあと、水回りだけでも外注したい」という使い方も現実的です。ただし品質にばらつきがある点は、正直に認識しておいたほうがいい。
産前産後の記事で民間サービスを前面に出すのは、僕は少し控えめにしたい。先に確認すべきは、あなたの自治体にある公的支援のほうだと思っています。
最後に:倒れる前に、一度「頼んでいい」と許可を出す
産前産後に家事代行——正確には、ヘルパー派遣——が「神」に感じる瞬間って、部屋がピカピカになったから、というより、立っているだけで息が上がっていた自分が、ソファに座れた、という瞬間なんじゃないかなと思っています。
掃除のきれいさより、心のゆとりのほうが大きい。「子供と向き合う時間が生まれた」「夫婦の喧嘩が減った」——そういう声を聞くたびに、僕はそう感じます。
制度があるかもしれない。使えるかもしれない。それだけ調べてみる。だとしたら、それだけでいいんですよね。
あなたが今、シンクの前で立ち止まっているなら——まずは、お住まいの市区町村のページを開いてみてほしい。
※自治体の助成制度・利用条件・料金は地域・年度により異なります。記事執筆時点の一般例であり、最新の正確な情報は必ずお住まいの市区町村の公式サイトまたは窓口でご確認ください。