ドラム式洗濯乾燥機、ロボット掃除機、食洗機。
「家事をラクにしたい」と思い立った僕が、最初にやったのは家電量販店のサイトを延々と眺めることでした。レビューを読み漁って、価格を比較して、それでも決めきれなくて、ブラウザのタブが10個くらい開きっぱなしになっている。あの状態、覚えのある人もいるんじゃないかなと思います。
そうやって悩んでいるうちに、ふと別の選択肢が頭をよぎる。
「そもそも、家電を買うより、人に頼んだ方が早いんじゃないか?」
ここで多くの人が、新しい沼にハマります。「家事代行と時短家電、結局どっちがコスパいいの?」という、答えの出ない比較地獄です。今日はこの問いに、できるだけ正直に向き合ってみたいと思います。
「どっちが得か」で考えると、たぶん一生決まらない
先に結論めいたことを言ってしまうと、この問いに「どっちが正解」という答えはないんですよね。
これ、逃げているわけじゃないんです。実際に両方を支持する人の意見を聞くと、どちらもめちゃくちゃ筋が通っている。だから「正解はどっち」で探している限り、僕らは延々とタブを開き続けることになる。
大事なのは勝ち負けじゃなくて、「自分は何にお金を払いたいのか」をはっきりさせること。そこさえ決まれば、答えは驚くほどあっさり出ます。
というわけで、まずは両者の言い分を、できるだけフェアに並べてみます。
時短家電派の言い分:これは「投資」であって出費じゃない
家電派の主張を一言でまとめると、「家電は最強の投資先」です。
ここで出てくるのが、時給換算という考え方なんですよね。例えば自分の時給を2,000円とします。毎日30分、嫌々やっている家事があるとしたら、それは1日あたり1,000円を損している計算になる。
じゃあ、7万円の時短家電を買ったらどうなるか。70日でモトが取れて、それ以降は「自分の時間」が純利益として積み上がっていく。一度買えば維持費は安いし、仕上がりにブレもない。自分のペースで完結する。
要は、「最初にお金を出せば、あとは黙って毎日働き続けてくれる従業員を雇うようなもの」なんです。実際、資産を十分に持っている人でも、「1回数千円を払い続けるのは投資効率が悪い」と言って家事代行を使わず、家電に全振りしている人がいるくらいです。
毎日確実に発生する作業を、仕組みで消す。この発想に痺れる人は、間違いなく家電派です。
家事代行派の言い分:機械には買えないものがある
一方で、1回数千円を払ってでも人に頼む人たちがいます。彼らの言い分も、これまた強い。
まず、クオリティが違う。「自分が丸2日かけても出せない仕上がりを、プロは3〜4時間で終わらせてくれる」という、純粋な技術の差です。
そして、家電がどうしても届かない領域がある。蓄積したカビや水垢、収納動線のアドバイス、「どこに何を置けば暮らしが回るか」という設計。こればかりは、ロボット掃除機には頼めないんですよね。
でも、家事代行派が本当に価値を感じているのは、たぶんここじゃないんです。
「部屋が綺麗に保たれているだけで、心がふっと軽くなる」という、メンタルの部分。「心の安寧が買えるなら、想像より全然安い」という声が、これを物語っていると僕は思っています。家電は時間を生んでくれるけど、人の手は「ちょっと笑える自分」まで連れ戻してくれることがある。
表にして並べてみる
ここまでの話を、いったん整理します。
| 比較項目 | 時短家電 | 家事代行 |
|---|---|---|
| 得意なこと | 毎日のルーティン家事の自動化 | カビ・水垢・収納など人の手が要る領域 |
| お金の出方 | 初期費用は高いが維持費は安い | 1回ごとに払う(継続コスト) |
| コスパの源泉 | 時給換算での回収・長期の利回り | プロの仕上がり・心の余裕 |
| 仕上がり | 安定(ブレが少ない) | 当たり外れはあるが上限が高い |
| 向いている人 | 仕組み化・自動化が好きな人 | 自分では出せない質と安心が欲しい人 |
こうやって並べると分かるんですが、両者はそもそも戦っていないんですよね。守備範囲がきれいに分かれている。
どっちが上とか下とかじゃない。ただ、あなたが今いちばん手放したい家事が、機械で消えるタイプなのか、人の手が要るタイプなのか。その違いだけなんだと僕は思っています。
ついでに、もう一つだけ視点を足させてください。家電か家事代行か、の前に「そもそもその家事、減らせないか」という第三の道です。
たとえば食器を減らして洗い物の絶対量を落とす、服を畳まず吊るす収納に変える、ものを減らして掃除する面積そのものを小さくする。お金をかけずに「発生する家事の総量」を削るアプローチですね。これをやってから家電や代行を検討すると、そもそも投資する対象が小さくなって、どっちを選んでもコスパが上がります。順番としては、これが一番最初に来てもいいくらいだと僕は思っています。
僕がたどり着いた、ちょっとズルい結論
で、ここまで散々「どっちが正解はない」と言っておいて、僕自身がどうしているかという話です。
正直に言うと、両方使っています。ズルいですよね、笑。
でも順番があるんです。まず、毎日確実に発生する苦痛な家事を家電に任せる。食洗機と乾燥機ですね。これは時給換算で回収が早いものから、小さく始めればいい。いきなり全部揃える必要はないです。
具体的に言えば、最初は数万円の乾燥機単体だけ、とかで十分なんですよ。それで「干す・取り込む」の苦痛が消えて余裕が戻ってきたら、次のステップに進む。子どもが生まれて床の清潔さが気になり出したら、水拭きやゴミの自動回収が付いたロボット掃除機の上位モデルへ。そうやってライフステージに合わせて優先順位を入れ替えていけばいい。最初から完璧な布陣を組もうとして固まるより、よっぽど前に進めます。
そのうえで、家電ではどうにもならない領域だけ、たまに人に頼む。普段の維持は機械、たまの本気の片付けやリセットは人の手、という分担です。
要は、「自動化できることは仕組みに、人にしかできないことは人に」。当たり前のことを言っているようですが、これに気づくまで僕はずっと「どっちか一方が正解」だと思い込んでいました。
「まず人に頼む」が向いている人もいる
ただ、これは僕のやり方というだけの話で、順番が逆の人もいます。
「家電を選ぶ気力すら、今はもう残っていない」という人。レビューを比較する元気がないくらい疲れているなら、先に一度、人に頼んで部屋と心をリセットしてしまった方がいい。家電選びは、余裕が戻ってからでも遅くないです。
その「お試し」として家事代行を使うなら、いきなり高い定期契約じゃなく、スポット(単発)から入るのがいいと思います。例えばCasy(カジー)のようなマッチング型は料金のハードルが低めで試しやすい反面、スタッフさん個人とつながる仕組みなので当たり外れがあるのは正直なところです。だからこそ、最初は単発で何人か試して、合う人を見つけたら指名する。これが失敗しない使い方なんですよね。
完璧なホテル級の仕上がりや、頑固なカビ取りを求めるなら、そもそも専門のハウスクリーニングの領域です。ここを期待しすぎると「思ってたのと違う」になるので、先に言っておきます。
最後に
最初の話に戻ります。
タブを10個開いて、家電を選びきれずに固まっていたあの夜。あのとき僕がやるべきだったのは、もっと安い家電を探すことでも、家事代行の口コミを読み漁ることでもなかったんですよね。
「自分はお金で、時間が欲しいのか、それとも心のゆとりが欲しいのか」。たったそれだけを、先に決めることでした。
コスパって、結局「自分が何を一番欲しいか」が決まって初めて測れるものなんじゃないかなと思います。そう考えると、開きっぱなしのタブも、少し違って見えてくるかもしれませんね。